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学級の活動

物語「なまえつけてよ」 物語の書かれ方を見つめる

5年1組 実践教科活動 2025/10/06

子どもは、実践国語科「心ふれるストーリー」の活動で「なまえつけてよ」(作:魚住直子)という物語に出あいました。この物語のあらすじは、次の通りです。
~「なまえつけてよ」のあらすじ~
 馬の牧場の近くに住む春花は、学校からの帰り道、牧場のおばさんから子馬の名前を付けてと頼まれる。「どんな名前がいいかな」と、子馬のまぶしい姿を思い描きながら道を歩いていると、ひと月前に引っ越してきた勇太とその弟の陸と出会う。子馬の名前を付けることになったとを伝えると、陸は目を輝かせて興味を示すが、勇太は、素っ気ない態度。春花は、そんな勇太に不愉快になる。夜、春花は、一生懸命に子馬の名前を考え、一つの名前が思い浮かんできて、安心して眠りにつく。翌日、牧場に行くと、子馬がよそにもらわれることになったため、名前はもう付けなくてよくなったことを聞く。春花は、おばさんに「いいんです―ー。それなら、仕方ないですね。」と応じ、考えた名前を胸の中に押し込める。勇太と陸は、困ったような顔で、春花をじっと見つめる。次の日、学校の廊下で、勇太は紙で折った小さな馬を渡してきた。その裏には、「なまえつけてよ」と、乱暴なぐらいに元気のいい字がおどっていた。「勇太って、こんなところがあるんだ」と春花は思う。昼休みの校庭を見ると、勇太の姿を見つけた。ありがとう。春花は、心の中でつぶやいた。

物語と出あった子どもは、「子馬の名前が最後まで分からなくてモヤモヤする」「子馬の名前が知りたかった」と感想を書いていました。

子どもが物語の書かれ方について違和感をもっていることをとらえた教師は、「作者は、春花が考えた子馬の名前を出した方がよかったですか」と問いました。子どもは、「出してもらわないと、モヤモヤするし、イライラする」などと、子馬の名前を出した方がよかったと、物語からありのままに感じたことを話しました。それとともに、「作者は、名前をわざと出さないで書いているんだと思う。出さないから、読む人に気にならせて、その後の話や名前も想像できる」「名前を出したら、勇太や陸が子馬の名前を分かるから『もう、いいや』ってなって、紙で折った子馬を渡すことにつながらない。物語が成り立たない」などと話しました。また、一人一冊持っている手帳に、「子馬は、勇太と春花の距離が近づくためのトリガー」「子馬の名前が分からなかったから、2人の友情が深まった」と書く子どももいました。子どもは、問いにはたらきかけられながら、物語において子馬の名前を出さなかった作者の意図、物語の書かれ方のよさを見いだしました。

子どもは、物語「なまえつけてよ」について、次のような後ばなしをつくりました。
「春花は家に帰ってランドセルから勇太にわたされたちいさな子馬をとり出した。うらの文字をもう一度見た。『なまえつけてよ』元気な文字にこころがあたたかくなった。よく見たらあの子馬ににていた。勇太なりにがんばったのかな、そう思った。つけようと思っていた名前をそのちいさな馬に書いた。次の日、春花は勇太にちいさな馬をわたした。名前を見た勇太はほほえみながら『いい名前だな』そう言った。その時、春花は『センスあるのかも!』と笑いながら言った。勇太と春花のきょりかがちぢまった気がしたのは、気のせいだろうか」

「休み時間が終わる5分前。勇太が教室に戻って来た。(あ、ありがとうって言わないと・・・)そう思いながら見ていたら、目が合ってしまった。(あっ)しかしすぐ目をそらされた。『・・・なんなのよ・・・。』馬をながめながらそう言った。馬を見ていると、ろう下のことを思い出す。『・・・やっぱり行こう』席を立った時、『おーい、授業始めるぞー。』先生の声が教室にひびいた。『あ・・・』言うことができず、3限に入った。3限が終わり、給食準備中、勇太の机に行った。『あ・・・さっきは、ありがとう』勇太はいっしゅんこっちを見たが、すぐに目をそらした。(・・・なんなのよ!本当に)勇太が口を開いてこう言った。『・・・別に・・・』本を開き、読み始めた。『本当にキレそう・・・』という気持ちをおさえ、こう言った。『・・・なんでくれたの・・・馬・・・』勇太はハッとしたが、何も言わなかった。春花はもう一度言った。『ねえ・・・』勇太が口を開き、こう言った。『おりがみ・・・したかっただけ・・・』少してれくさそうにそう言った。しかし、私は知っている。『その手、何?』勇太の手には、ばんそうこうが3枚以上はってあった。『・・・っ!』勇太は顔を赤くした。「・・・ありがとう」春花は自分の席に戻った。昼休み、勇太が来た。『おい・・・その折り紙・・・なんて名前つけたんだ・・・』春花はハッとした。『・・・ないしょ』その時、陸が5年教室にやって来た。『ねーねー、勇・・・あっ、春花ちゃんだっ!』春花は言った。『あ、陸くん・・・どうしたの?』『馬の名前、なんてつけたのっ!?』春花は笑い始めた。『あははっ、2人って同じこと言ってる!』陸と勇太は顔を見合わせて笑った。『ププッ』『あははははっ』教室に笑い声がひびきわたった。2人は、1週間もしないうちに仲よくなった。今では気軽に話せる関係になっていた。『おはよう!』『おはよ』いつの間にか、クラスが笑顔につつまれていた」

子どもは、「心ふれるストーリーシート」に、次のように振り返りを書きました。
「最初は、子馬の名前が最後まで出てこなくて、すごいモヤモヤしました。でも、考えていくうちに、作者の蜂飼耳さんは、わざと出さなかったんじゃないかと思っていきました。出さなかったことにより、読者にいろんな気持ちをいだいて、『続きが気になる』『この後もどうなるんだろう』と、先が気になるので、それも計算して物語を書いていたのではないでしょうか。今回の活動で、〇〇さんが言ってたのとにているけど、折り紙の子馬をわたしたのが仲よくなるトリガーになって、このあとも仲よくしたのかも!ってこうさつにもなりました。折り紙の子馬に書いてあった『なまえつけてよ』は、『らんぼうなくらい元気な字』って書いてあったけど、それは勇太なりにはげましてて、だから春花は、『勇太って、こんなところあるんだ』って言ったんだと思いました。多分だけど、勇太は転校してきたばっかりで、そっけなかったと思うの、だから勇太のことを知らなかったから、いいところに気づけて仲よくなったっていうのもあると思いました。後ばなしでは、折り紙の子馬を登場させたり、いっしょにしゃべって笑い合う場面も作りました。子馬は、後ばなしを書くってなったら、登場させるって絶対決めてて、てかそれしかないって思って書きました!…(笑)あと、そのあとも話してたんだろうな~って、想像しながら書きました。あとは、タイトルも関係させたいって思ったし、その馬をわたすんだけど、そのあともいっしょにしゃべってたんじゃないかなあって、思いました」

「勇太なりにはげましてて、だから春花は、『勇太って、こんなところあるんだ』って言ったんだと思いました」「勇太のことを知らなかったから、いいところに気づけて仲よくなった」と書いているように、子どもは、活動を通して、相手のよい所に気付けるという友達というもののよさや、物語において子馬の名前を出さなかった作者の意図、物語の書かれ方のよさを見いだしました。