ちいさな命 七変化「あるひあるとき」
『ちいちゃんのかげおくり』(あまんきみこ作・上野紀子絵 あかね書房)と出あった子どもは、仲間と役を相談しながら、家族でかげおくりをする演技をしました。子どもは、物語の終わりのちいちゃんが一人でかげおくりをする場面について、「ちいちゃんは天にのぼって家族みんなででかげおくりをしたと思う」と話しました。
ちいさな命が亡くなるお話を演じてきた子どもは、次に『あるひあるとき』(あまんきみこ作・ささめやゆき絵 のら書店)と出あいました。このお話は、「旧満州」生まれのあまんさんが、終戦の前後の期間をその地で過ごした子ども時代の経験が基になっています。
子どもはお話を聞き、「こけしは知ってるよ。でも家にはないな」「お父さんがひどすぎる。なんでこけしのハッコちゃんを燃やすんだよ」「ぼくにも大切な人形があるけどそれを燃やされたらいやだ」「何で日本に持ち帰れないの」「これは『ちいさな命七変化』じゃなくて、『ちいさなこけしの命七変化』だ」などのように、自分と重ねがら感想をもちました。
ノートに書いた感想からみんなで考えていきたい問いをつくり、お話を演じながら考えていくことにしました。
「幼いわたし」の役になった子どもは、西洋人形と市松人形は丁寧になでる演技をし、こけしのハッコちゃんは「ごろんごろん」と転がして遊ぶ演技をしました。
仲間は演技を見ながら「ハッコちゃんがかわいそう」とつぶやいたり、「すごい演技だ!」と興奮して話したりしました。「幼いわたし」を演じた子どもは、なでる演技やこけしを転がす演技を稽古ではしていなかったことを話しました。こけしが痛まないようにしたいという気持ちがあったということです。
違いを大きく演じるとよいと感じた子どもは、このお話にある「ちがい」を探しました。
・西洋人形と市松人形は売れたが、ハッコちゃんは売れなかった。
・防空壕の中にいるお母さんの気持ちと、わたしの気持ち。
・わたしと一緒にいる時のハッコちゃんの顔と、ストーブの中で燃やされている時のハッコちゃんの顔
・わたしが覚えていることと、覚えていないこと。
子どもは、二つの大きな違いのことを「対比」と呼ぶことを知りました。今後は、物語の中の対比に注目して演じていきます。