やぎさん、いままでありがとう
とうとう、やぎさんとのお別れの日が来てしまいました。子どもは、朝、いつも通りやぎさんに会いに小屋へ行きました。そして、掃除をいつものようにしたり、やぎさんへ最後のごはんを作ったり、クリスマスプレゼントをあげたりしました。牧場で食べてもらうためのごはんを作る子どももいました。
始めは雨がふっていましたが、スエトシ牧場の車がやって来ると雨があがりました。やぎさんをめえめえガーデンに連れて行き、お別れの会を始めました。やぎさんの大好きな野菜や果物で作った特製のケーキやサラダをあげました。
子どもは、牧場の藤原さん、飯島さんへ向けて感謝の手紙を読みました。
「私は、やぎさん、最初『どんな動物なのかな?』と思いながら楽しみにしていました。みんながやぎさんのために、めえめえステップで『こんなお店を作ろうよ』とか『今日はこのお店に行こう』とか思って、めえめえステップができてきました。やぎさんが喜んでくれて『楽しい』とか『うれしい』と思っていたけど、ついに帰ってしまう日が来てしまいました。みんなかなしい気持ちです。だけど、やぎさんの思い出ができたから、本当にありがとうございます」
そして、いよいよやぎさんを車に乗せるときが来ました。やぎさんをめえめえガーデンから車へ誘導しようとしますが、やぎさんは車に乗りたがりません。子どもは、大好きなごはんを使って連れて行ったり、「くわ、がんばれ!」「牧場で仲間が待っているよ」「お父さんが待ってるよ」「スマイル、がんばったね!」と声を掛けたりしました。ブラウンは、走って逃げてしまい、原っぱを一周しました。最後に乗ったのはマックスでした。
全員が車に乗ると、子どもは、「ねえ、『スマイル』を歌おうよ」と話しました。「スマイル」は、転校する仲間とのお別れ会や、教育実習生とのお別れのときに歌ってきた歌です。「スマイル」は、学級で、別れゆく仲間を励ます歌になっていました。
ーーーなみだを拭いて 空を見上げて・・・
ーーー遠くにいてもほら 君のことを想い出しているよ・・・
大きな声でやぎさんに歌を届ける子どもや、涙ぐんで声が思うように出ない子どもの姿がありました。
涙を流しながら歌っていると、車の扉が閉められました。牧場の飯島さんは、子どもに向かって深々と一礼をされました。
そして、車が出発。子どもは自然と走り出し、車が見えなくなるまで追いかけました。
子どもはこの日の作文シートに、次にように書いていました。
「今日、やぎさんとおわかれをしたよ。とってもとってもかなしかったよ。さいごにスマイルをうたったよ。そのときからないたよ。いまは、もっともっとないているよ。やぎさんが車にのるときに、あばれたよ。車がいったとき、みんなおいかけたよ。でも、わたしはいかなかったよ。すこしいって、いったんすわって、そこからずっとないていたよ。」
「今日、やぎさんとおわかれをしました。さびしかったです。とてもいっぱい見まもりをしてきて、やぎさんのことをともてもだいじにしてきました。4月からいろんなことがありました。はじめてやぎさんを見た日、とてもとてもうれしかったです。それから、○○くんとやぎさんの見まもりをするようなりました。とてもたのしいとかんじました。とてもたのしいことができたのも、やぎさんのおかげです。やぎさん、いままでありがとう。」
「今日、おわかれしたよ。けっこうないている人がおおかったよ。ぼくは、たすけたよ。またあえるよってね。ぼくもまたあいたいです。いつかふじ山にのぼって、やぎさんってさけびたいです。またやぎさんにあいたいです。またおみせをひらきたいです。」