物語「親友になりたい」 語りを見つめる
子どもは、実践国語科「心ふれるストーリー」の活動で、物語「親友になりたい」(作:魚住直子)に出あいました。
この物語のあらすじは、次の通りです。
~「親友になりたい」のあらすじ~
5年生が始まったばかりの4月。同じ学級の女子の祖母が亡くなったと連絡が入り、わっと泣き出したその子を、偶然その場にいた夏美は、かな子、梨紗子、綾の4人で見送ることになった。夏美は、どう慰めたらいいか分からず、かばんを持つくらいしかできなかった。下駄箱に着いたとき、梨紗子が口を開いた。
「そんなに悲しまれるなんて、おばあちゃん、きっとすごく幸せな人生だったんだね。」
かっこいい!そう思いながら夏美は、泣き止んだ子のうわばきを下駄箱に入れた。夏美は、どこか大人っぽく、それでいて明るい梨紗子と2人だけで仲よくなりたいと思った。一方、4人のうち、幼さの残るかな子に対しては、誘われても嘘をついて遊びを断った。図工でペアになったときには、「さえなくて、足がおそくて・・・」と考え、かな子のことをカメに見立てて絵を描いた。また、綾が梨紗子と想像以上に仲がよいことを知ると、夏美の頭は熱くなった。
ある日、4人で向山に行くことになった。山登りの最中、夏美は、梨紗子と綾が話しながら歩く姿を見て、急につまらなくなった。距離をあけて歩くうちに、3人とはぐれてしまう。しばらくして、呼びに来てくれたのは、かな子だった。夏美は、ありがとうと言うべきだったが、腹が立ち、かな子を置いて頂上まで登った。しかし、いくら待っても、かな子はやって来ず、登山事務所の人にも手伝ってもらって、かな子を探した。夏美は、怖くなり、万一のことがあったらと自分を責めた。ようやく、かな子が見つかると、夏美はその場にしゃがみ込み、「本当にごめんなさい!」と謝った。
帰りのバスの中。夏美は改めてかな子に謝った。かな子は、5年生の4月のことを話し始め、「あのとき、夏美ちゃん、さっとかばんを持ってあげたでしょ。それに、だれよりも先にうわばきを入れてあげた」「言葉とかより、だまって、そういうことをできる人が一番、優しいって思ったの」と伝えた。夏美は、目が熱くなった。バスの窓の外を見ると、にじんだ街灯が、きらきらと光っていた。
子どもは、「夏美のことをどう思うか」について、話をしていきました。すると、夏美の「心の中でため息をついた」「(かな子は)勉強も体育もできない」「(かな子をモチーフにした絵を)カメの絵にしてもいいかな」という行動や心情を表す叙述を挙げながら、夏美はかな子のことを嫌っていることをとらえ直しました。一方で、かな子は夏美のことを「一番優しい」というふうに思っていることも確認していきました。話合いを進める中で、ある子どもが「かな子って、夏美の心の中を知らないから、『一番優しい』って思えるんじゃなないの?」と話しました。そのことから、この物語は、夏美の心の中をかな子は知らない語り方をしていることを見いだしていきました。また、そういう語り方をしているからこそ、「物語がつながっていく」「(かな子が夏美の心の中を知っっていたら)物語が終わる」と話す子どももいました。
さらに、子どもは、「この語、夏美とかな子はどうなっていくか」について、「夏美とかな子は親友のようになっていくかもしれない」などと話し、後ばなしへの想像をふくらませていきました。



子どもは、次のような後ばなしをつくりました。
~次の日~
「おはようございまーす・・・」
昨日の罪悪感が心にのこる。いつもなら、梨紗子所に集まっているけれど、夏美はそういう気分ではなかった。机に顔をふせ、夏美は考えこんだ。15分ほど経った時、元気で明るい声が教室内にひびいた。
「おっはよー!!」
かな子だ。かな子が夏美の方を見た時、夏美はどんな顔をしたらいいのか分からなかった。顔を上げた時、目の前にかな子がいた。
「夏美ちゃん、おはよう!」
「お、おはよう・・・」
数秒間、ちんもくが続いた。夏美が何か話題を探していた時、かな子が言った。
「まだ昨日のこと引きずってる・・・?」
背筋がピンとする。
「うん、やっぱり申し訳なくって」
「もういいよー。私、気にしてないし」
かな子が笑いながら言う。夏美には、その笑顔が初めてかがやいて見えた。夏美は、その時思った。
「親友になりたい」
あれから3か月後。
梨紗子が転校することになった。父親の仕事で、4年ほどアメリカのニューヨークに移住するらしい。
「みんな、今まで仲よくしてくれて、ありがとう」
梨紗子は涙をこらえながら、想いを語った。綾は涙をふき続け、かな子はプレゼントの山を抱えて遅刻してきた。夏美は、唯一、何も言えずにいた。
その日を境に、綾は1人でいることが多くなった。かな子は、毎日話しかけていたが、夏美は何も気にかけずにいた。
それからというもの、綾は他のクラスの女子と仲よくするようになり、夏美とかな子は2人っきりになっていった。
「夏美ちゃん!今日も家、行っていい?」
「昨日、来たばっかりじゃん(笑)、まあいいけど」
「やった~!!やっぱり夏美ちゃんは世界一優しいね!」
「明日は向山行くから無理だよ~?」
「そう言えば2年前、私が向山で迷ったんだよね~」
「梨紗子、元気にしてるかな?」
2人で笑い合った窓の外は、明るい街灯がきらきらと光り輝いていた。











